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「つくる」暮らし
by hiruzenkougei
冬の種市へ
1月24日、25日と東京は吉祥寺で開かれました古来種ファーマーズマーケット 冬の種市に人参を持って参加してまいりました。
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両日とも本当に盛況で、時間帯によっては入場制限がかけられるほど。

いつも蒜山耕藝の米や野菜をご購入いただきながら、お顔を拝見したことがない関東のお客様の方々が何人も、わざわざ、会いにきてくださって、たくさんの励ましをいただきました。それはそれは、幸せな時間でした。

そして、楽しい時間は過ぎていって、、、。

種市の最後を飾るトークイベントに。こちらも100人の会場がぎっしり埋まる盛況ぶり。すごい熱気の中、濃密な時間を過ごすことができました。

我らが盟友「オカズデザイン」さん、オーガニックベースの「奥津典子」さんと先輩農家「すどう農園」さん、我々「蒜山耕藝」

そして、編集者、執筆家の山村光春さんをナビゲーターに3部構成でお話がすすみます。

古来種(在来種、固定種)を大事にしよう!というテーマのイベントなんですが、そこにある精神は、単純に、現在のF1種や農業のあり方を否定する善悪二元論ではありません。それぞれの立場から、自らの生き方を考えるきっかけになるということを出演者の皆さんはおっしゃっていました。

オカズデザインのともさんは「素材に寄り添うことを大切にしたい」と。「古来種は実際にモノがくるまでどんな状態で、どんな大きさで来るのか全く分からない」ことが多いそうです。以前使ったことがある品種でも、生産者が違えば全然違うものだし、おなじ生産者でも時期が違えば、硬さや味は変わってくる。だから、気を抜くことができない。でも、料理というのは本来そういうものだ。と。

レシピありきではなく、今、手に入る素材を徹底的に活かす方法を考えて工夫する。そうあるべきだし、それが一番おいしいと、おっしゃっていました。

今回のイベントで、在来品種の大豆を使うにあたり、薄皮がないほうがよいと判断して、加熱した大豆、一粒一粒すべての薄皮を手で剥いたそうです。いったい何千粒剥いたことでしょう。しかも、そういう苦労をしても、いつもは一言もいいません。「食べてもらえば分かりますから」

奥津典子さんは、自らをマクロビオティック研究家といわれることに違和感があったといいます。誤解と手垢にまみれてしまったマクロビオティックという、カテゴリーのラベルを自分に貼られるのは嫌だったと。でも、全くの肩書を外してしまうと、自分がやっている仕事の説明に毎回、膨大な時間が必要になってしまう。そんなジレンマがあったといいます。

今の世の中、たくさんの情報が氾濫しています。インターネットが普及する前に比べて、何十倍、何百倍も、多くなっていることでしょう。
情報が氾濫すればするほど、それに接した人は、一つ一つの情報を吟味することなく、今までの知識で作り上げたカテゴリーの箱に情報をポイポイっと入れて、わかった気になってしまう。

古来種を大事にするということは、F1種が悪いとか、伝統野菜が良いとか、単純にカテゴリーに入れることではなくて、むしろ、品種ごとの、いや、同じ品種でもばらつきが出てくる古来種の野菜たち一つ一つの個性を大事にしてほしいという思いであると思います。

野菜に限らず、自分が食べる食べ物や、衣服など身の回りのモノを購入する際に、便利さや価格の安さだけで決めるような、そういう安易なカテゴライズでの評価をしないでほしいと奥津さんは言います。そういう選択や扱いは、必ず自らの身に還ってくると。

今、企業に使い捨てされる若者の話題が頻繁にメディアに上ります。その若者がどんな性格をしていて、どんないいところがあって、どんな夢をもっているか、とか、そんなことは全然関係なく、単純に作業スピードや時給が低く雇えるかとか、あらかじめ決められた評価軸でカテゴライズされ、比較され、酷使されるのです。
しかし、それは、私たち一人一人が創り出している世界なのですよ。と。おっしゃっていました。

種市にはそんな深い意味があったのですね。

とても感動しました。今もその後遺症は続いていて、ほやーんとしております。

私のおぼろげな記憶なので、実際の発言とは違うのかもしれませんが、私が受け取ったメッセージはこんな感じでした。もっとたくさん、いろいろおもしろいお話があったのですが、もう、お腹一杯、胸一杯。
きちんと消化して、春から、また、畑と田んぼ。頑張りたいと思います。

桑原広樹
by hiruzenkougei | 2014-01-30 02:45 | 藝のつながり
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