先日、島根県で自然栽培に取り組んでいる反田氏のところに訪問してきました。
「洪水と共存」を一生のテーマと公言している彼の取り組みを見ていると、自然栽培=無肥料無農薬栽培ではないということと、その道を歩んでいくことの魅力を改めて感じます。
そのあたりのことをこのブログで詳しく書こうと思っていたのですが、口では言えても文章にするのは難しいので断念し、
今回は彼の代名詞とも言える「はんだ牛蒡」を紹介します。
反田氏の農地は島根県江津市桜江というところにあります。
大きな江の川沿いにある桜江は、川が運んできた肥沃な土壌が堆積されています。
画像でみるとこんな感じです
ユンボでゴボウの横を掘ったところです。
見えづらいかもしれませんが、50〜60cm掘っても地層の変化はありません。
そして見事なまでの砂壌土。
以前、反田氏が可能な限り掘り下げたけど何m掘ってもずっと同じ土だったそうです。
普通なら数十センチ掘れば赤土や固い粘土層が出て来たり、川沿いだったら石がゴロゴロ出て来たりするのもですが、こういうのは見たことがありません。
ここまで堆積されたということは並大抵の水量ではないことは想像に難くありません。
「洪水と共存」との言葉通り、毎年のように洪水被害のある土地なのです。
しかも洪水とは簡単には言えないようなスケールの大きい洪水です。
行けば驚くと思いますが川を渡る橋が非常に高く、畑に立ちながら20m以上も高い所を指差して「あの辺まで水があがりますよ」というほど。
もちろん田畑は完全に水没して水面から竹が見えるくらいという状況になると言います。
日本でそういうところがあるなんて知りませんでした。
洪水は農業経営に致命的なダメージを与えかねないけど、その洪水が上流の土や砂だけでなく山の腐植という恩恵を運んでくれたものでもあります。
その土地の自然や環境としっかりと向き合い、人と自然がともにつくりあげていく。
そういう姿勢で作物をつくるということが自然栽培の一つの姿であると思うのです。
そういう意味で、反田氏の「洪水と共存」という決意が見事に表れているのが
「はんだ牛蒡」だと思うのです。
ゴボウは一般的に収穫機で一気に収穫していくものなので反田氏もそれを使用しているのですが、
自然栽培のゴボウは根が深く入りすぎて抜けないことが多いとのこと。
なので写真のようにユンボでゴボウの脇を掘ります。
ユンボで掘り上げられた土。石が無いのがわかりますね。
この穴に人が入って手で抜きます。
根はそうとう深くまで入っているので全体が抜けることはまれで途中で切れます。
生育が良いのは2人掛かりでも抜けません。
収穫したゴボウはこんな感じです。
研修生の丸ちゃんが選別しているところです。
とても長いけどこれ収穫の時に途中で切れてますよ。
実際にみると本当に驚きます。
ちなみに今シーズン、抜けたなかで一番長かったものは170cm!?
出荷する時は袋に入れるためカットしてしまうのだけど。
先に書いたように肥料を使用しているところは先細りになっているので収穫機で抜けるくらいなのですが、自然栽培のは先細りすることなくそれができないため手がかかるというジレンマがあります。
作業中におしゃべりしていたおばちゃんも
「昔からゴボウ作ってたけど、30〜40センチくらいの長さだった」
と話していました。
それって洪水が与えてくれた恩恵だけではこんなゴボウはできないということではないですか?
ゴボウが長ければ良いということではないし、
反田氏も長いゴボウを作ろうと思ってなかったでしょう。
ただ、洪水と共存する道を選び、その土地の自然の力と作物の力を活かす為に肥料に頼ることなく、
できる限りのことをした。
その結果が今のゴボウの姿だと思うのです。
桜江のその畑のあるところでしかできないし、反田氏という男がいなければこれは生まれなかった。
まさに「はんだ牛蒡」じゃないですか!!
私も同じ農業者として正直羨ましく思います。
思いはあってもそれがなかなか形にならないのが自然栽培の世界。
「はんだ牛蒡」のように生き方が具現化された(私の主観ですよ)ものはなかなかない。
まだ蒜山に移って一年経つか経たないかの自分がそれを求める段階ではないけど、目指す方向性として、いつか蒜山耕藝としてそういうものをつくりたいという気持ちがとても強くなりました。
反田氏との話では、まだまだ課題は山積みだそうです。
栽培上のことだけでなく、農業経営のこと、地域のこと、そして洪水とどう共存してくかなど。
彼のブログにはその辺のことがたくさん書いてあります。
独特の反田節で苦しいことや辛いことがたくさん。
でも不幸ではなくて、道を見つけたものが感じるであろう幸福感のような空気が漂う不思議なブログです。
反田氏と密に交流するようになってまだ数ヶ月。
短い時間の中でたくさんのことを学ばせてもらいました。
そして、私が言うのも変ですが、
同じ志を持つ者としてこれからも高めあっていけたらと思います。
「はんだ牛蒡」がとてつもなく根深くなり抜けなくなったように、
自然栽培という世界も今感じているよりもずっとずっと奥深いものなのでしょう。
ハマればハマるほど大変なこともでてくるけど、
その美しさ
その香り
その味
これを体験してしまったらもう後戻りはできません。
もっとそれを体験するために、
蒜山の自然と「共存」していこう
共に存在しているだけという「共存」ではなく、
存在を認め合いエネルギーの共鳴が起こる、
そういう意味での「共存」
このへんの理解はまた変わるだろうけど、
今のところはこんな感じです。
長々とお付き合いありがとうございました。
ゴボウなだけにお許しを。
たかや ゆうじ
★追記★
ブログを読んでくれた反田氏が彼の思いを書いてくれました。
「私とゴボウ」
私の投稿と合わせてぜひご一読を。
反田節が効いています。
関係無いけど、彼のブログの顔写真。
今と比べるとずいぶんふっくらしてるおりますな〜。