朝、洗濯物を干していたら、ふわりと金木犀の香り。
ああ、近くに金木犀の樹があるんだなと見わたしてみると、なんと我が家の庭に。
1年前の今はまだこの家に住んでいなかったので、この樹が金木犀と今日まで気がつかなかったのです。
四つの季節を一巡りして、この秋「お米」という実りを頂くことができました。
このお米を私たちが住む真庭市にある「
パン屋タルマーリー」さんで酒種用のお米として試してもらえることになりました。
パン屋さんでお米?と思われる方も多いと思います。
この機会にパン屋タルマーリーについて、私たち蒜山耕藝の目線から紹介させてください。
パン屋タルマーリーは格さん麻里子さんご夫妻が営む、自らを「農産加工場としてのパン屋」と言い切るほど、農業、特に私たちが志している「自然栽培」について深い理解のあるパン屋さんです。
なぜならば、彼らのつくるパンは究極的に素材の力を引き出してつくられたパンだから。
格さんのパン製造の高い技術は、素材の力を引き出すためのもので、
自分がこうしたい、こういう味にしたいといった人間の思惑のようなものがとことん排除されたパンなのです。
そのお味は…本当にエネルギッシュ。そして噛めば噛むほど、からだに染み渡っていくような美味しさ。
はじめて食べたときは本当に衝撃的でした。パンという概念がひっくり返るくらい「美味しい」のです。
タルマーリーでは今4種類の自家製天然酵母を使用しています。
その中のひとつ「酒種」は自然栽培の米と天然の麹菌で仕込まれた酵母。
(天然の麹菌というのも、本当にすごいことなのです。話が深すぎるので、こちらはまた別の機会にゆっくりと…)
この酒種に、私たち蒜山耕藝のお米を試してもらえることになりました。
このことは蒜山に移住を決めたときから私たちが温めていたひとつの大きな目標でした。
そもそも、今こうして蒜山の地で農を営む、その大きなきっかけを与えてくれたのが「パン屋タルマーリー」なのです。
自分たちがどんな思いで農を営んでいるか。
その思いを共有できるパン屋さんがそばにある。
このことが私たちにとってどんなに力強く、大きな支えになったことか、言葉で表現するのが難しいほどです。
私たちはあくまでも農家です。
作物をつくり、それをひとりでも多くの方の食卓に届けることが仕事です。
私たちの思いはそのままに、さらにスケールアップして届けてくれるのがタルマーリーという存在です。私たちが大切につくった素材をパンという表現で多くの方に伝えてくれる。
農家としてこんなに嬉しいことはありません。
蒜山耕藝のとうもろこしを使った「マヨコーン」。
傷があったり、サイズが小さくて販売できないとうもろこしをタルマーリーが大量に購入してくれました。
スタッフ総出でとうもろこしの皮をむき、蒸して、手作業で粒を外し…その光景は忘れることができません。
こんなに面倒なことなのに、喜んで引き受けてくれ、美味しいパンに昇華させてくれる。
私の心の中は感激と感動の嵐でした。
写真はありませんが、蒜山耕藝のかぼちゃを使った「かぼちゃ食パン」も。
こちらも優しい甘さと食感で、じんわり美味しい。
マヨコーン、かぼちゃ食パン共に現在もタルマーリーで販売されていますので、ぜひ手に取ってみてください。
そして蒜山耕藝のお米でおこす酒種を一緒にワクワクお待ち頂けると嬉しいです。
自然栽培1年目の田んぼでつくったお米。
きっとうまく発酵しなかったり、格さんにたくさんご苦労をおかけすることになると思います。
(ちなみに自然栽培歴が長く、真摯に取り組まれている方の田んぼのお米は、とても安定して発酵していくそうです。)
天然の菌が否応無く出してくれるこの結果、とてもおもしろいと思いませんか?
私たちのお米がどのような過程でパンになっていくのか。
ここは包み隠すこと無くお知らせできたらと思っています。
農家として悲しい結果が出たとしても、それが自然界のこたえ。
心して受け取って、前に進むのみです。
この場を借りて、格さん、麻里さん、タルマーリーのスタッフのみなさん。
いつも本当にありがとうございます!
心いっぱいの感謝を込めて。
高谷絵里香