私達がなぜ蒜山に移住することになったのか?その訳を説明するときにこの話題を
避けて通るわけにはいきません。
2011年3月、東京電力福島第一原発での事故による放射性物質の放出により、千葉で農業を営んでいた私達の畑が汚染されてしまいました。そして、我々の畑にあった作物からは最大200ベクレル/㎏を超える放射性物質が検出されました。4月と5月に土壌を検査した時には放射性セシウムが約500ベクレル/㎏検出され、さらには4月よりも5月のほうが値が高くなっていました。
事故直後に隣市にてホウレンソウなどから暫定基準値を超える放射性物質が検出され出荷停止となったニュースを聞いた瞬間、我々の圃場で生産された農産物を、5歳と2歳と妻のおなかの中にいる自分の子供たちに食べさせるわけにはいかない。そして、自分たちが食べない野菜を出荷するわけにはいかない。と思い、その日から私たちの畑から野菜が出荷されることはありませんでした。
私の妻と子供たちを実家に避難させた後、私たちは情報収集を始めました。一旦汚染されてしまった環境全体を除染(本当は移染)することはできないし、一部を除染しても意味がないことをチェルノブイリ事故のウクライナの例から知りました。そしてその影響を一番受けるのが子供たちであることを。
私たちは、この汚染された土壌が舞う環境で、そのホコリを吸い込みながら農作業や子育てを行うことを受け入れることができませんでした。
そして、紆余曲折を経て、この蒜山に私たちはやってきました。お借りできる田畑を探しこの春から農産物を育て始めることができました。
早いうちに、圃場の土壌とそこで育った野菜たちへの福島原発の影響を調べる必要があると私たちは考えてきました。そこで私達の圃場の土壌と、一番最初に育った野菜で調査することにしました。
まだ、検査機関からの正式な書類が届いていないのですが、速報として数値のみの連絡をいただきましたので、まずは、皆様にお知らせしたいと思います。書類が届き次第、またブログにてアップさせていただきます。
今回は以下の4検体を調べて頂きました。
畑の土壌(8月3日採取)
田の土壌(8月3日採取)
カボチャ(7月下旬収穫)
小麦 (7月下旬収穫)
調査機関としては一次検査として、自然栽培野菜の流通を営む㈱ナチュラル・ハーモニーさんにてガンマ線スペクトロメーターによる検査を行ってもらいました。
一次検査で数値が検出されたものを対象に、二次検査では最も精度が高いといわれているゲルマニウム半導体検出器を使用している無添加食品販売協同組合さんにて検査を行っていただきました。
一次検査の結果、カボチャ、小麦からは放射性セシウムは検出されませんでした。
(検出限界はセシウム134:1.4Bq/kg セシウム137:2.1Bq/kg)
二次検査の結果
田の土壌 セシウム134:不検出 セシウム137:7.9Bq/kg
畑の土壌 セシウム134:不検出 セシウム137:14.0Bq/kg
セシウム137が検出されました。
半減期が短いセシウム134が検出されていないことなど、総合的に判断して福島原発事故以前のものであると考えられます。
セシウム137は自然界には存在しない物質ですので過去の大気圏核実験か、チェルノブイリ事故かそれ以外の公表されていない核物質の放出など、いずれにしても人為的な原因です。
福島原発事故で我々が意識する前からこの地球は汚染され続けてきたのです。それでも核のエネルギーが人類の幸せの為に本当に必要なのか?改めて考えずにはいられません。
蒜山耕藝では、これから収穫するお米についても、放射性セシウムの検査を行う予定です。
来年以降、毎年一回、土壌の検査は継続していきたいと考えています。農産物については土壌の検査結果が大幅に増加しない限り、原則、検査はしないことにしました。
多品目にわたる検査を毎年行うことは零細生産者である我々には経済的に困難ですし現在の土壌の値では植物への移行係数を考慮すると、検査によって農産物から検出されることはないのではないかと判断しました。
私たちが農作物を出荷する基準は「自分、家族が食べるもの、食べたいもの。」です。
放射性物質に限らず、自分たちが「食べられない」と判断したものを出荷することは決してありません。
今回は長文となりましたが、大事なことですので詳しくお話させていただきました。
最後までお付き合い頂きましてありがとうございました。
桑原広樹